『私の居場所はどこにあるの?』。
1998年に学陽書房から出版されたこの本が、
この6月に文庫になって発売されています。
私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち (朝日文庫 ふ 26-1)
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藤本 由香里
朝日新聞出版
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少女マンガのみならず、マンガ全般を幅広く読んでこられ、
またマンガ以外の分野にも広く目配りをされてきた藤本さんならではの
少女マンガに関する入魂の論考集。
ついに文庫化、です。
「文庫版まえがき」には、本書が最初に世に出たときの反応についてふれられ、
なぜこの本がこういう書き方をされねばならなかったか、について書かれています。
興味のある方はぜひ、
その文章を直接、読んでみて頂きたいと思います。
たくさんの注も追加され、
手頃な値段で入手しやすくなって登場している今、
ぜひ多くの人に読んでほしい、気持ちのこもった本です。
私自身、98年の学陽書房から出た本を持っているのですが、
カバーがトレーシングペーパーのように透ける繊細な素材なのに、
がしがし読み返したせいもありかなり劣化してきていたことに心をいためていたので
文庫の発売、とても嬉しかったです。
解説は、三浦しをんさん。
こちらも熱のこもった解説で、感動しました。
それにしても三浦さん、
「この世にマンガさえなければ、恋や仕事や洗顔にもっと時間を割くことができただろう。」
という一文の、
「洗顔」
という言葉のリアリティにやられました。
ホントです、三浦さん…ッ!!(熱く共感)
もちろん、そのあとには
「しかし、この世に漫画がなかったら、生きるうえでの喜びの大部分を知らず、社会や人生について考える視点を持てず、とても不幸だっただろうとも思う。」
との文章が続くわけですが。
ホントに、マンガ(を読むこと)に、どんだけ打ち込んでるのか私たち…!!
でも藤本さん、三浦さんに比べたら
マンガ読みとして、まだまだ私はひよっ子ですワイ!!
と、とりあえずこころのふんどしを締め直した次第です!!
オレはようやく
のぼりはじめたばかりだからな
このはてしなく遠い
マンガ読み坂をよ…(未完)
というかんじです!!
…あら?
少女マンガの話だったハズが、
なぜか某少年マンガの引用に…。
すいません。
少女マンガと同じくらい、
少年マンガも、ものすごく一生懸命読んできたもので…!!(土下座)
尚、藤本さんには、
『愛情評論 「家族」をめぐる物語」』(文藝春秋)
という評論集もあり、大島弓子や『はみだしっ子』に関する論考は
こちらに収録されています。
ちなみに、直接少女マンガとは関係ないのですが、
この本の中の<「お茶」が映す人間関係>という文章が私は好きです。
「食事」が象徴するのは「家族」、
「酒」が象徴するのは「仲間」、
そして、お茶が象徴するのはつきあってはまた離れていく「友人」関係。
そう指摘する藤本さんの文章は、
「お茶」には「お茶」の、後をひかず、それでいて喉をうるおしてリラックスさせてくれるよさがあること、
そして、
いろんな形の、いろんな濃度の人間関係があることの大切さ、豊かさに気づかせてくれる視点があると思います。