2006年05月11日

泣き顔が、見たい。

去年のエイプリル・フールのこと。
私はたまたま複数の家族と一緒に旅行中で、メンバーには、小学生や幼稚園児の子どもたちも複数名いました。

そのなかの小学5年生の女の子が、食事中、

「私、本当は●●(←自分の名字)って名字じゃないんだよ」

と真顔で言い出しました。
すると、それを聞いた6歳の女の子がたいへん驚いて、

「え!?ホント!?」

と尋ねると、5年生のお姉ちゃん、すかさず言い放ちました。

「う・そ」



…それを聞いた6歳の女の子は、………突然、机につっぷして、えぐえぐと泣き始めたのでした…。

一同、唖然。


いやぁ、ほら、今日エイプリル・フールだから!
お姉ちゃんも悪気あったわけじゃないし!
一瞬、騙されたからって、なにも泣かなくても!

と思いながらも(そして口に出してフォローしつつも)、見ていておかしくてたまらなかった私。
かわいいやら、おかしいやら。
なんかまさに「子ども」、ってかんじだなぁ〜、と。


でも、子どもがショックを受けて、泣き出す直前の顔って、ちょっとぞくぞくするところがある。
かわいそうなんだけど、ちょっとその顔が見たい、と思うような。
見てると、胸の奥がざわざわする、残酷さといとおしさがないまぜになったような、そんな気持ち。


そういえば、フィクションで私が好きなのは、『よつばと!』(あずまきよひこ メディアワークス)の4巻にでてくるエピソード。

主人公は、6歳の元気な女の子・よつば。
よつばのお隣に住んでる女子高校生・風香(ふうか)は失恋して涙ながらに落ち込むんだけど、「どーした!?」と心配(?)するよつばに、「失恋」というものを(6歳の子にわかるように)なんとか説明しよう、と悪戦苦闘。

「えーと…じゃあよつばちゃんで言うと…よつばちゃんは誰が好き?」
「とーちゃん!」
「じゃあ (失恋って)とーちゃんはよつばちゃんのこと好きじゃなかった
そんな感じ」

と風香が言ってしまうんだけど、その

「とーちゃんはよつばちゃんのこと好きじゃなかった」

という言葉に「この世の終わり」みたいな大ショックを受けるよつば。

次のコマで「いまから泣きます」というかんじに目に涙をいっぱいためてふるふる震えてるよつばが、すごいおかしくて、かわいい。
もちろん優しい風香は泣きそうなよつばを見てあわてて、
「うそっ!!とーちゃんよつばちゃん大好きっ!!」「たとえば!失恋のたとえ話ね!?」
とフォローしてくれて、よつばは、
「あ――!たとえばな――!?」「びっくりしたなー」
と納得して、泣かなくてすむんだけど。


6歳ぐらいって、女の子だとけっこうクソ生意気な口きいたりもするんだけど、そのくせそういう「心の中がまる見え」な瞬間があって、おかしいんだよねえ。
と、思わずにいられない。


子どもが泣く直前の顔が好き、と言っていた人、そういえばいたなあ。
銀色夏生さんだったっけ。



子どもを育てるのはすごい大変なことで、人によっては9割が「大変」でできてる、と思うかも(と、子どもはいないけど幼稚園の先生をしていたことのある私は思う)。

でも、残りの1割が、他の何とも替えられないものすごい力をもった1割で、「かわいい」とか「おもしろい」っていうのも、きっとその中にはいってると思う。
1割なんだけど、一瞬、他の9割の「大変」を忘れてしまうような、そんな力のある1割。
『よつばと!』は、その1割をすご〜く上手にすくいとってるなあ、と、いつも感心してしまう。



『よつばと!』は、もちろん今でも売れていて、とても人気のあるマンガだけど、まだちょっとマニアックなイメージがあって、少しもったいないな、とも思う。
もちろん、たとえばよつばのお隣さんが、「全員かわいくてタイプが違う三姉妹」だとか、「よく彼女たちの水着シーンがある」とか、いろいろ(「大きなお友達」むけの)仕掛けもあるんだけど。
だけど、それがあんまり、気にならない。
あずまきよひこさん、うまいなあ、と思う。
この作品には、あんまりマンガを読まないような、(たとえば読売新聞の『あたしンち』とかしか読まない、というような人とか)もひきこむ力が、絶対あると思う。


もっともっと、読まれていいマンガじゃないかなあ。
大きなお兄さんはもちろん、大人も子どもも楽しめるマンガだと思います。
posted by 川原和子 at 15:15| Comment(3) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
子供を育てることの「大変」と「おもしろさ」は4:6ぐらいかな。今んとこ。自分の子だとまた違うんだよなぁ〜。
銀色さんも子供がいないのかな?
Posted by youmei at 2006年05月11日 17:54
どもです^^
よつばのふるふるシーン、可愛かったですねえ^^
ダメージ与えまくる側だったのにあの可愛さったら。

子供の泣き顔といえば私が真っ先に思い出すのはアニメ「火垂るの墓」での、妹が泣き出す瞬間をものすごーく細かくカット割して描かれていたシーン。ああ、子供ってこういう感じで泣くよね!と。
あのアニメ自体はあんまり好きじゃないのに、あの表情の変化の細かさ・追及の仕方はスゴイ!と思ったんでしたー。
Posted by haneusagi at 2006年05月11日 21:10
>youmeiさま
>自分の子だとまた違うんだよなぁ〜。

これ、よく聞きますよね。

>銀色さんも子供がいないのかな?

いえ、いらっしゃいますよ。
自分のお子さんを怒って泣きそうになったとき、「あ、泣く」「いま私の好きな、泣くのをがまんする顔になってる」というようなことをお書きになってて、当事者なのにフッと観察者になるのが面白いな、と思いながら読んだ記憶があります。


>haneusagiさま
>よつばのふるふるシーン、可愛かったですねえ^^
>ダメージ与えまくる側だったのにあの可愛さったら。

あはは。ねぇ。
なんかあの「世界が壊れる」くらいの衝撃を受けちゃったんだ!って感じが、すごいかわいいんですよね。

> 子供の泣き顔といえば私が真っ先に思い出すのはアニメ「火垂るの墓」
> での、妹が泣き出す瞬間をものすごーく細かくカット割して描かれてい
> たシーン。ああ、子供ってこういう感じで泣くよね!と。

なるほど。
私は、あのアニメは、声の力もすごく感じました。
あのセツコ役の女の子の声はすごい。かわいすぎです。


あと、『よつばと!』最新5巻で、よつばが、話し中のお隣の「かーちゃん」にしゃがんでしゃがんで、とせがんでちゃっかり背中によじのぼるところとか、すごいおかしかったです。
「あーそうそう、子どもってこうだった!」って感じで。

幼稚園に勤めてたとき、しゃがむと(また子どもと一緒にいると、しゃがむことが多いんです)すぐに子どもがめざとく背中に乗ってきてました。もうなんつーか、「背中があると乗りたくなるのか?乗らずにおれないのか?」くらいの勢いで。
そんでなんかしょっちゅうおんぶしてたなぁ、とかいうことを懐かしく思い出しました。

あのころ私の背中におぶさってた子たちも、もう20歳すぎかあ。…トシとるはずです。
Posted by 川原和子 at 2006年05月11日 23:02
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