(私が思うところの)少女マンガらしいマンガを読んだなあ、と胸が熱くなりました。
ふじつか雪「金魚奏」(白泉社)。
ヒロインの飛鳥は、高校二年生。
お祭りで、太鼓の演奏をしていた雅生(まさみ)という大学生に一目惚れした飛鳥は彼に会いに行くが、雅生は、耳が聞こえない青年だった…。
もともとぶっきらぼうな性格の雅生は、聴力を失う過程で出会った和太鼓を演奏することで心の均衡を保っているところがあり、そんな雅生にまっすぐに気持ちを伝え続ける飛鳥は、なんとか彼の心に、彼の世界に入れてもらおうと努力する。
でも、ときに気持ちは行き違い、雅生を傷つけてしまうことに、飛鳥は自分も傷ついたりする。
近づきたい気持ち、傷つけたくないこころ、拒否される悲しみ、そして、伝わる喜び。
一見クールだけど年齢相応に葛藤をかかえた雅生が、少しずつ飛鳥に心を開いていく様子や、世界が広がっていくがゆえの苦しさも、さらりと、でも繊細に描かれていて、胸に迫ります。
耳が聞こえない雅生と飛鳥とは、たとえば歩きながらでの夜道では会話が大変だったり(夜道では唇が読めないから)、早口だと伝わらなかったり、いろいろもどかしさもあるけれど、
それでも伝えたい気持ちがあるから、伝える手段を探していく。
そう、「金魚奏」は、コミュニケーションということについての物語、なのだと思う。
とっても今風の絵柄なので、読み始めるまで私にはちょっと敷居が高かったのですが(ロートルマンガ読みなので…)、この「気持ちのやりとりを丹念に描く」ところは、まさに私が親しんできた少女マンガ!と勝手に感じて、嬉しかったです。
奥付の発行日は、2006年9月。
もしもまだ読んでいない方がいらしたら、そっと勧めたい。
そんな1冊でした。
http://www.amazon.co.jp/%E9%87%91%E9%AD%9A%E5%A5%8F-%E3%81%B5%E3%81%98%E3%81%A4%E3%81%8B-%E9%9B%AA/dp/4592188500/sr=11-1/qid=1165593918/ref=sr_11_1/