えーと、改めて。
7月1日(土)、2日(日)、新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」にて行われた、日本マンガ学会の大会に、泊まりで参加してきました。
地方開催、ということで、宿にて、懇親会・合宿座談会が行われるという得難い機会でもあり、個人的には、結果としてたいへん得るところが多い大会でした。
http://www.kyoto-seika.ac.jp/hyogen/page/2006taikai/program.htm↑このプログラムでもおわかりかと思いますが、すばらしい、めくるめくマンガ舞踏会でしたよ!!
(あっ、舞踏会はあくまでも比喩です。念のため)
過去のマンガに関する、きちんとした事実の調査を元にした評価・研究への意欲と、いま現在そこにある、「切れば血の出るような」ホットなマンガを語る言葉を模索していこう、という試みがクロスするような、とても熱い大会だったのでは、という感触で、たくさんの刺激を受けて帰って参りました。
以下、感想など。
●会場の「りゅーとぴあ」、ものすごい広くてピカピカな建物でビックリ。さらに、なんと能楽堂にての大会だったので、発表者の方々が、はからずも能舞台にしずしずと登場される、という、なんだかとても不思議な空間でした…。
●一日目の研究発表もとても興味深かったのですが、特に二日目のシンポジウムには興奮しました。「見えないマンガ・語られないマンガ-invisible manga-」というテーマで、ふだん語られることの少ないマンガに焦点をあてる、という意欲的なもの。
●第1部 「広報マンガ・教育マンガ」は、意外なほどの大部数が出ていてたくさんの人に読まれている、広報マンガや通販マンガ、社内報マンガ等についてのお話。それぞれの方のお話が上手くて聞き応えがあり、思わず聞き入りました。
また座長・藤本由香里氏が、各々の方の発表の後になさる質問が、「そうそう、そこがもっと聞きたかった!」と思う的を射たものだったので、かゆいところに手が届く、という感じ。
個人的には、パネリストのお一人・秋武秀典氏がプロデュースされた、企業社長の実録マンガの、あまりのインパクトに衝撃を受けました。
あまりの衝撃に、思わずその後の昼食時に、一緒に参加した友人達に、
「もし自分の人生をマンガ化してもらうなら、どのマンガ家さんがいいですか?」
と質問して、皆を一瞬、唖然とさせてしまいました。
「そんなこと、考えたこともなかったですよ」と言われましたが、…え?か、考えません?
私、そんなことばかり考えてますYO…。
ちなみに私の人生は、ゼヒ福本伸行先生でお願いしたいです!
もうね、西村しのぶのマンガを読んでうっとりしてる自分に、
「しょせん他人のステキライフ…!!」
「自分は、歳だけ重ねた…歳女ッ…!!」
と愕然とするわけですよ!!
くぅううううう!!切ねえ!!切なすぎる!!
……つーか、リアルすぎて、…なんかだんだん気分が暗くなってきたので、もうヤメときます。
ま、そんな感じで!!(どんなだ)
あとこの話題では、古本コレクターSさん(女性)が、「私は諸星大二郎先生希望です」とおっしゃったのがツボに入りました。
おおッ、「古本ハンター」ですね!
おらと一緒に古書市さ行くだ!!
…あ、というか、「栞と紙魚子」シリーズですよね。むしろ。
…って、なんの話をしてるんでしょうか、私たちは…。
●昼食後は、第2部・「萌え系/キャラマンガ」についてのシンポジウム。まさに「今そこにあるマンガ」を語る言葉への模索の試みで、たいへん刺激的でした。『コミックゼロサム』編集長・杉杉野庸介氏の現場のお話も興味深いものでした。個人的には、『ぱふ』編集長の竹内哲夫氏がおっしゃった、
「『女性が描いて(中学生・高校生を中心とした)女子が受容する、少年が主人公のマンガ』は、一番熱気があるのに一番語られていないマンガなのでは?」
という指摘は、非常に重要なものだと感じました。さすが、中学生・高校生の女子を中心とした読者をターゲットとしている(と思われる)『ぱふ』の編集長、とうなりました。
●また、座長・伊藤剛氏の「萌え」「キャラ」マンガについて、「語られない」ことに関して、
「言説の側の語彙や分析装置の不備としてとらえられないか」
という発言にも感銘を受けました。
私は少女マンガや、その一形態(と思っている)である、やおい・ボーイズラブについて「語る」「評価する」上では、
「既存の基準ももちろん重要だけど、何か別の補助線をひかないと、(たとえばファンの受容の熱気に対して)有効な評価ができないんじゃないか」
とつねづね感じていたので、この伊藤さんの言葉を聞いて、改めて、
「うう、私じゃあ微力すぎるけど、でもなんとか有効な補助線がひけるようになりたいよなあ」
との思いを新たにしたのでした(大望すぎ?)。
●第3部・「パチンコ・パチスロマンガ」も、パチンコをやらない私にとってはほとんど未知の分野ながら、パチンカーの間では、雑誌を媒介に、非常に濃密な共同体的なサークルができあがっていることが感じられ(部数的にもかなりのもの)、たいへん興味深くお話を伺いました。雑誌間の相互乗り入れや、編集者のセンスが光る意欲的でいて肩の力が適度に抜けた数々の試みが非常にユニークで面白い!
●末井氏や慶徳氏は、つねに「そんなに深くは考えず、なんとなく出してます」的なことをおっしゃっていたけれど、末井氏の、
「パチスロをするなかで様々なドラマがあるんだけど、それを人と共有できないという孤独に注目していた」
「自分の体験から、パチンコ・パチスロをして負けて、トボトボ家に帰るときに寄るコンビニにパチスロ誌があったら、絶対買う、と思って雑誌を作った」
というご発言に象徴される「編集者的センス」に脱帽でした。
大変鋭い着眼点だと感じました。
もっといろいろお話を伺ってみたいです。
…うわー、なんか、語るとキリがないですね。
いやぁ、本当に面白い大会でした。
あと、
●とてもお忙しいであろう理事の方々が、ものすごく体も心もつかって動かれることにも、胸を打たれました。
なんせ、学会誌を理事が手ずからうってくださるんですよー。
領収書も切って下さるんですよー。
なんかもう、ホント、…その情熱に、頭が下がります。
私のような一参加者からは見えないけど、おそらく準備段階でもさまざまなご苦労があると思うのですが、そういったことは口になさらず「動かれる」お姿に、いろいろと感じるところがありました。
●懇親会・合宿座談会では、さまざまな方と交流できて、すごく楽しかったです。と、こう書くと当たり前っぽいですが、「直接交流できる」ことの情報量の多さには、毎回いちいち感動してしまいます。すばらしい機会に感謝感謝。
そんなわけで、全般的に本当に有意義な大会でした。
まとまりのない感想で恐縮ですが、「刺激的でした!」ということが少しでも伝わると嬉しいです。